TAKE IT EASY Story

ジャパンツアーに大成功を納めた民川裕司は
早くもニューヨーク公演に向けて始動していた。

現状に満足できず、絶えず新しい目標に向かって走り続ける裕司だが、
走り続けることしか、心の中のいらだちを忘れることのできない彼であった。

しかし、ニューヨーク公演中止という突然の知らせに裕司はあらためて、
自分の小ささと世界のデカさを思い知らされる。
「北へ行ったら死んじゃうよ。」
という小さな同居人・草野つみきの予言者めいた言葉に
あえて逆らうかのように裕司は北への旅に出るのだった。

サイドカーを駆って北海道を旅する裕司はある町で二人の若者と出逢う。

一人は仲根六郎、牧場で働きながら、世界タイトルを目指すボクサー。
脇目もふらずに青春をボクシングに賭けている男だ。
もう一人はこの町のスター、天才ピアニストと言われる氷室麻弓、
ライブハウスでの彼女の熱狂的なピアノのステージは
裕司の心にグイグイとくい込んできた。

この二人との出逢いが、うつろだった裕司の心に新しい火をともした。
裕司はこの町にとどまる決心をした。
もちろんお目当ては麻弓である。
なんとか彼女の心をつかみたい裕司だが、
よそ者に対する麻弓や仲間の反発は大きかった。
仲根に恋の手ほどきをしながら、
自分は麻弓にあしらわれっぱなしの裕司である。

そんなある日、裕司は青井という男に出逢う。
青井はこの町の指導者的存在の男で、
若者たちはこの男の影響を相当受けていた。
皆、まるで洗脳されたかのように行動の自由を奪われているのだ。
「若者は自分の与えられた世界ですべてを尽くせばいい。」
という青井の言葉で裕司はこの町が
異常に排他的である理由を理解したような気がした。
と同時に、青井のやり方への反発がムクムクと湧きおこってくるのだった。
「麻弓も仲根もみんな青井の檻に入れられている。
何が何でも麻弓を東京でデビューさせてやりたい。」
そんな裕司の情熱でかたくなにカラの中に
閉じ込っていた麻弓の心もしだいに開き始めた。
「私の本当の目標はカーネギーホールよ。」
「そう、それでいいんだって!」と嬉しそうな裕司だが、
それも束の間、青井の手にかかって、こっぴどく痛めつけられ
荒涼たる火山の頂上に置き去りにされてしまった。

満身創痍の裕司はこみ上げてくる怒りをパワーに山を下ろうとする。
岩壁にしがみつき、原生林をさまよい、滝をすべり落ちる。
サバイバルへの闘志だ。

「絶対に青井を許すわけにはいかない!
アイツをたたきのめし、麻弓を東京へつれ帰る。」
ボロボロに傷つきながらも裕司は町へたどりついた。

奇跡ともいえる麻弓との再開。
しかし、それも青井の手によってまたもや引きさかれてしまう。
「もう誰も俺を止めることはできない。」
意を決した裕司は青井のアジトに監禁された麻弓をつれ戻し、
仲根と三人で空港へ向かうが青井の仲間の追跡にあい、
仲根の牧場の中へ逃げ込んだ。

あやうく青井の一団との銃撃戦が展開されるかに見えたが、
警官・池谷の介入で事無きに終わる。

事件は解決した。
見つめあう裕司と麻弓、やがて、二人の体はふれあい、
熱い口づけをするのだった。
しかし、そんな二人の姿は
一人の幼い少女を危険な遊びにかりたててしまった。
麻弓を自分のスターとして狂的に慕う日野かえでだ。
『麻弓がどこかへ行っちゃう。』幼い狂気は絶望の果てに
裕司のサイドカーのブレーキのボルトをゆるめるという行動に走らせたのだ。

ようやく麻弓に本当の自由を取り戻した裕司は、
晴々とした気分でサイドカーに乗り込んだ。

そ・し・て……。