■ 1986 STYLE K2
“それ”しかできない男に、何か別の事をや
らせようとしたり、やってしまったりする事
が、世の中をうまく渡っていく方法だとする
ならば、“はみ出し者”的な扱いを受けても、
自分らしくそのままで生きている奴を、素敵
だと思う。そのために、他のものが目に入ら
なくなったり、不器用になったりしても、そ
れを自分勝手と言えるだろうか?
僕は逆に、何でもできてしまう奴の方が、何
でも気にせず愛想笑いを浮かべながらでもや
ってしまう奴の方が、つまらない奴だと思う。
もちろん、人それぞれいろんな形でいろんな
重荷やプレッシャーや決まり事を背負ってい
るに違いない。
しかし、それを理由にしたくない。それを理
由にしてしまえばどこまでも落ちる。「一度落
としたプライドは、留まることなく落ちてい
く」と思っていたい。少なくとも今の段階で
は。
“それ”しかできない奴ほど、“それ”にかけ
ている奴ほど、いつも不安と恐怖と弱気な自
分と戦っているのだと思う。
決してその顔を見せないぶんだけ……。
人前でヘラヘラしているぶんだけ……。

某TV Showでアナウンサーが“それ”しかで
きない男に、“それ”以外の事を無理にやらせ
ようとした。何度か押し問答な会話が続き、
まわりも少しシラケた雰囲気になった。彼は
ガンとしてやらなかった。
アナウンサーがいやみを言った。「本当に大変
なご協力ありがとうございます」
彼が言った。「そんな事をしたら、何年もかか
ってやってきた自分が無駄になる」と…。

素敵な奴だと思ったネ……。

それともう1つ、
今の音楽状況、音楽環境のどうしようもなさ
を、まのあたりに見せられた気がした……。
そして、その世界に生きている自分も少した
めらった。

だけど、僕も忘れていないつもりでやっている。
本当に“それ”しかできない男になるまで、
なれるまで。
パラダイスだネ…それは…やっぱ、“いい男”
にならんと、やってる意味は何もない。