Vol.22  1988.3
5

 「やってナンボのもんだから……」
この世界に限らず、その過程よりも結果がすべての中で自分のものを出していくのはやはり並大抵のものじゃない。
良くて当たり前。
悪ければケチョンケチョン。
しかも、いいものだからと言っても、それが売れる保証はない。
そんなに力を入れ全精魂を傾注し作った自信作でも、セールスに結び付かなければ避難される。
だからこそ例え人がどんな評価を下そうとも、自分で納得出来るもの、自信を持って人に薦められるもの、本物だけを世に送り出していきたい。
当然すぎる程のごとく常識的な考え方だと思う。
 吉川晃司……これから先も、とにかく、いろいろと僕らに夢を見させてくれるに違いない。
もっともっとこれまで誰もやってくれなかったようなBIG DREAMを。
実質的には、2年半位の仕事の付き合いだった。
もちろん、彼がこの世界のホンの入り口をたたき始めた時期から、顔は知っていた。
デビューの前後によくファンクラブに顔を出していた。
自分宛のレターに目を通しに編集部のデスクに座って、一通、一通に目を皿のようにして、喰い入りながら。
 彼については、とにかく、いろんな事が言われ、語られ、書かれてきた。
誰もが知っていること……こういう世界に入ったから、有名税も山程支払ってきた。
でも仕事上の関係で見て来た眼には、彼のやさしさとマナーの良さが強く印象づけられ、この世界に入った人間のクササとかどうしようもない不良ぽさ、アクの強さはなかった。
ROCKをやる人間はこうでなきゃ、音楽をやる人間はこうでなければ……とのワクには全くはまらない。
ごく普通の常識的な、というよりも、一個の人間として、あたり前のことをしゃべり、普段着のままの彼がいつも存在してきた。
だからといって、一億総タレント化の時代の、いい加減さはみじんもなく、自分のやりたいこと、夢を誰よりも強く内側に抱えて前を向いて走っている。
 音楽は……自分を表現する方法のひとつの手段。
スポーツであれ、絵であれ、それが詞であっても、例え、活躍のFIELDが違ったにしても、才能を開花させたに違いない。
いや、もちろん現在進行形で"カッコいいもん"やってく為にENDLESSで吉川晃司であり続けるだろう。
 あたり前のことをやり、あたり前のことを言うから、打たれる。
妙な社会の中で、あたり前のことを言い続ける人間が本当に少なくなった。
誰もが、ちょっとオカシイヨ!?と思いながらも、どうしようもないジレンマに陥ってしまう。
音楽という、もっとも大衆的なもので勝負するが故に当然、敵も多くなる。
雑音が多くなる。
でも関係ないヨ!?
 ごく普通に"世界"を口に出せる。
音楽に国境はないなんて使い古された言葉が本当に古くさく滑稽に思えてくる。
いまの日本的状況がそうなら、ひとつひとつブッ壊していけばいい。
すでに島国根性が世界でこっぴどく叩かれている時代なんだから、いいタイミングでもある。
パワーを付け、感性も磨いて飛び出して欲しい。
 音楽はその字の通り、オトをタノシムだ。
楽しんで洋楽も邦楽も好きになる。
詞も大切だし、言葉も大切だ。
でも最後はやはりサウンドだ。
演歌も大好きだけれども、晃司のノリも大好きだ。
ビートルズだってミックジャガーだって、スプリングスティーンだって、スティングだって、みんな好きになる時は詞から入っていかないじゃないか。
 何百組、何千人の歌い手がいる。
みんなそれぞれの理由で好きな対象を見つける。
様々な趣味を持つ。
様々な価値観がある。
でもどこかである人間の歌を、ハートを好きになってしまったワケだ。
心の抽き出しに吉川晃司が居る。
自分で見つけた、元気印の素……それぞれが、それなりに大切にしたらいい。
好きなヒトの一挙手一投足をジッと見守っていけばいい。
 夢とカッコいいもんを追い続ける彼はずーっと人間であり続けるし、自分がBESTだと思う方法で、メッセージを贈り続ける。
吾々は逆にいつでも好きである事を止めれる自由がある。
そんなアンバランスな立場で、好き勝手に言いたい放題で終わってしまうなら、せっかく自分の抽き出しにしまい込んだ夢が無駄になる。
 秋頃か、あるいは来春にはもっともっと大きな夢が舞い込んでくる。