1992/8 Daily AN
#1


水の中  子供の頃はね、泳げなかったんですよ。
夏が嫌いで。
中学の時、学校のプール忍び込んで泳いでいたら水泳部にそのまま引きずり込まれまして。
単に暑いからさ、そのへんに転がってた水泳パンツはいて勝手にプール入ってたの。
部員少なくてね、脅されて入ったって感じ。
"お前は今日から水泳部だ!""泳げないんですけど""関係ない!"って(笑)。
で、まあそれから水球始めるわけだけど、一種、格闘技ですよね。
よく言うんですけど、"水の中なら馬場でも殺せる"って。
ガキの頃なんて、ケンカになると水辺に誘い込んで負けそうになると水に飛び込む。
そんな奴でした。
カッパ状態ですね。
 今だに、水に入らないとどうも調子悪くなっちゃう。
水の中は生活の中で、本当に個人になれる場所。
物を考えたり悩んでる時は、水の中か車の中。
回りに人がいたとしても潜っちゃえば一人だしね。


「すかんぴんウォーク」  東京出て来て、最初の1年は何もしてなかった。
飼い殺し状態って言うんですか?
レッスンとかね、そういうのあったんですけど、要するに全国から俺みたいなの集めて寮に入れますよね。
スクールメイツみたいな形で養成してって。
デビュー待って10年みたいな人が寮にいたりするんですよ。
頭来まして、社長室行って机のもの引っくり返したんですよ(笑)。
世の中解ってないから恐いもんないし。
そしたら"お前は骨がある"って事になって。
"ヘッ!?""役者だな"って言われたんです。
"俺は歌やりたいんですけど""お前のルックスは歌はダメだ、役者になれ"って。
その当時って二重瞼でビューラーしてるような連中ばっかりだったでしょ。
まぁ、何でもかんでもデビューしちゃえばこっちのもんかなって、「すかんぴんウォーク」のプロジェクトになるわけです。


「キャット・ピープル」  中学3年の時観たんですけど、エンディングの主題歌で始めてデヴィット・ボウイと出会った。
オクターヴ下のレンジで歌ってるんですよね。
「レッツ・ダンス」に入ってる奴とはアレンジも違うんですよ。
それと同時にこの映画でナスターシャ・キンスキーと出会って。
女優さんの中では彼女がいちばん好きです。
女優としてと、女としてと。
獣のようなフィジカルな外見でね、目だけ冷たい。
憂いを潜ませた視線。
そこに女神を見たり娼婦を見たり、瞬間瞬間でね。
たまらなく素晴らしいなと。
それ以来、ボウイもN・キンスキーもずっとチェックしてる。


テレビ  やっぱり歌とライヴって思ってたけど仕事はテレビばっかりで。
心ここにあらずって感じでね。
フラストレーションたまって、歌いながらセット壊してた。
昔、テレビってメディアは奴らに飲み込まれなければどんどん利用すべきだって言ってましたけど、それば強がりです(笑)。
だってバラエティとか出たくなかったもん。
僕は器用じゃないから、それが出来る人だったらいいけど、どうしてたくさん喋らなきゃいけないんだって。
だから当時、佐野元春さんとか桑田佳佑さんとケンカしましたね。
どうしてロックの人ってテレビに出てくれないの?って。
そういう人達が出てくれるとテレビの番組自体が向上すると思ったんですよ。
前にクリスマスの番組やったじゃないですか(←'86.12.24桑田佳佑プロデュース番組「MERRY X'mas SHOW」日本テレビ)。
あれも、飲み屋でケンカになったんですよ。
そしたらよしやろうってあれになったんです。
ああいうのがもっと出来ればテレビも面白かったんだろうけど、だんだん歌番組のパワーなくなって来て、バラエティの要素どんどん増えて来て、出るのヤになって。
いつもチェッカーズの連中とも酒飲んでそういうこと話てましたよ。
でもチェッカーズはね、裏切りだよ(笑)、最近あいつらとは付き合いないっスよ(笑)。
チェッカーズの奴らはでも才能ありますよ、「チン義なき戦い」とか面白いもん。