TAKE IT EASY Story

scenario #1

空−−−星屑がボンヤリとにじむ都会の夜空に、
囁くように「イノセント スカイ」が聞こえてくる。

     流れ星だろうか、光の玉がスーッとよぎる。  (O・L)


野外コンサート
     歌う、民川裕司。


同・ステージ裏
     コンサートを終えた裕司。
     パーティの声、先行。
     「セクシー、スピード、スリル、一言で言えば」
     「集中力ね」
     「知的集中力」


パーティ
     そこは青山あたりの、現代の最先端を気取る者たちの
     酒場(プレイスポット)蠢く、超ファッションの男と女。
     作詞家、評論家、デザイナー、さまざまな分野のスノッブたち。
     「それだけならディランだってあったわよ」
     「知的だけじゃなくて肉体的にも」
     「プラス、過激さ」
     「あれでまだ20歳」
女A   「例えば三島よ」
女B   「三島ね。いい線ね。彼を見てから死んでほしかったわ」
女A   「あと3本は小説書けたかもね」
女B   「ヴィスコンティだって天国で地団駄踏んでるわよ、きっと」
     カットイン−−−便所の落書きが書かれる。
     『見てくれだけの教養』

女C   「ナイル?」
男B   「ナイル・ロジャース」
男A   「ボウイ、ミックジャガー」
男B   「今じゃマドンナのプロデュースしている」
男A   「次はオリエンタルボーイ」
男C   「まだちょっと早いんじゃない」
女C   「早すぎないわよ」

     カットイン−−−壁への落書きが書かれる。
     『いつわりの感性』

男   「少くともアイドルとしちゃ行きすぎなんじゃ」
男   「アイドルっていうのは周りが決めること」
女   「本人はななからアイドルって自覚がないんだから」
男   「組織と個のはざまってやつさ」
女   「どうやって自分のアイデンティティを通すのか」
男   「見ものだね」

     カットイン−−−壁への落書き。
     『うつろな会話』


プレイスポットのトイレ
     マジックを持って壁に落書きしている裕司の顔−−−寂しそう。


同・外
     ドアをたたく男。
男   「おい、いつまでやってんだよ。後がつかえてるよ」
     ドアが開く。
     裕司でてくる。その顔−−−涙を流した後のようだ。
男   「何だ裕司か、見ないと思ったら、えらい長いトイレだな、
      みんな待ってるよ。主役がいないんじゃ、パーティ盛り上がら
      ないぜ」

     裕司、出て行く。
     男、ドアを開けて立ちすくむ。
     マジックで書かれた落書き。
     
     『見てくれだけの教養
      いつわりの感性
      うつろな会話
      だれも自分の言葉で語ろうとしない
      ここは夢の墓場』  (WIPE)