TAKE IT EASY　Story
scenario #2

		一面のスカイブルー　　　　　戻ってきた裕司。　　　　　巨大な人間の目が光り、銀色の野生獣が飛びかかっている　　　　　－－－絵を背景にスッと少女が横切る。　　　　　草野つみき。つみき　「お帰り！」　　　　　戻ってきた裕司、ガレージのシャッターに描かれた絵！？を見ている。裕司　　「また塗り替えたのか」つみき　「うん、おととい。どう？」裕司　　「シュールだな。14歳の」つみき　「シュール？何、それ」裕司　　「おやじさんは」つみき　「学校」裕司　　「あ？また呼び出しか」つみき　「教室中全部塗り替えたの」　　　　　　　　　　カットイン－－－　　　　　ローズピンクに塗り替えられた教室。裕司　　「あのなァ……」　　　　　呆れる裕司に、つみき、郵便物を渡す。裕司　　「何でだろうね」つみき　「小包み預かってる、昨日届いてた。ニューヨークから」　　　　　ニューヨークからの小包み。
		同・マンション・階段　　　　　裕司と、つみきが登ってゆく。　　　　　歩幅が合わないので、つみきは駈けるようについてゆく。つみき　「ね」裕司　　「あ」つみき　「ニューヨークの公演、決まったの？」裕司　　「（頷いて）子供にゃ関係ねェの」つみき　「ア」裕司　　「なんだよ」つみき　「"うん、決まったよ"って素直に言えばいいじゃない。　　　　　　またカッコつけて。だから誤解されんのよ、若い子に」　　　　　３階の踊り場。裕司　　「黙ってろって、顔だけ宇宙人」つみき　「なによ、足だけ宇宙人」　　　　　裕司、３階の廊下を歩いていく。　　　　　つみき、屋上への階段を登る。つみき　「（裕司の後ろ姿に）裕司」裕司　　「あ？（ふり返る）」つみき　「なんかひらめいた」裕司　　「（ウンザリ）ひらめけ、ひらめけ。今度は何だってね」つみき　「（幼い霊感を必死にまさぐる）部屋に入ったらね　　　　　　……電話くるよ……出ちゃダメよ。爆発するから」裕司　　「はい！」
		同・マンション・裕司の部屋　　　　　裕司が入ってくる。　　　　　ワンルームの、広い部屋。電話が鳴る。　　　　　思わず苦笑して、電話を見る裕司。　　　　　受話器を肩にかけ、小包みを開ける裕司。裕司　　「はい」マネージャーの声　「何してる？」裕司　　「ニューヨークの彼女から何か送ってきた」　　　　　傍に、ニューヨークのカフェバーで、ヤンキーガールと　　　　　裕司が並んで撮った写真。マネージャーの声　「そのニューヨークの話だ」裕司　　「イエッ。この娘も待ってるぜ」マネージャーの声　「公演が中止になった」裕司　　「－－－！」マネージャーの声　「プロモーターのロビンソンから連絡が入って……、　　　　　　まだ世界に通用するアーティストじゃないそうだ」裕司　　「この間のコンサート見たって？」マネージャーの声　「見た上でのあちらの判断だ」裕司　　「（ダダをこねるように）そのロビンソンおじさんだけが　　　　　　ニューヨークのプロモーターじゃないでしょ。　　　　　　やらないうちから何だよ、どれぐらい通用するか　　　　　　確かめにいくんじゃなかったの？」マネージャーの声　「しょうがねェだよ、失敗は許されないんだ。　　　　　　どれだけ金がかかると思ってるんだ」裕司　　「……」マネージャーの声　「スケジュールがあいちゃったな。どうする？」　　　　　裕司、写真の彼女を見る。裕司　　「（ムキになって）ニューヨークが俺を待ってるんだ。行くよ、俺は」　　　　　受話器を置く。　　　　　小包みを開けた－－－途端に、バーンと破裂。裕司　　「－－－！」　　　　　粉と紙吹雪が飛ぶビックリ箱。　　　　　SAYONARA 　　　　　と手書きされた旗が立っている。女の声　「サヨナラ」裕司　　「……」　　　　　ひっそりと笑う裕司。
		部屋のバスタブで入浴する裕司　　　　　ニューヨークのガールフレンドとの写真を引き裂いて捨てる裕司。裕司　　「ニューヨークは俺を待ってないか……」　　　　　裕司バスタブにもぐりこんでいく。
		旅支度の裕司（ふかん）　　　　　大きな皮のトランクにつめられた荷物、服　　　　　－－－トランクのふたをして、毛布をくくりつける。　　　　　天窓からつみき。つみき　「どこ行くの？ニューヨーク？」　　　　　裕司、見上げる。　　　　　天窓に顔を出しているつみき。裕司　　「どっか旅行ってくるよ」つみき　「どっかって」裕司　　「空のきれいなところ」つみき　「だめ！」裕司　　「何で？」つみき　「死んじゃう」
		マンション屋上　　　　　つみきの絵－－－広い草原に、放牧された牛、転がっているサイドカー。　　　　　あお向けに倒れている足の長い男性。　　　　　そばでつみきに似た少女が見下ろしている。　　　　　青空が屋上いっぱいに広がっている。　　　　　中心に描かれた銀色の飛行物体が青空に浮いている。　　　　　それにかぶせて、つみき、裕司の声。つみきの声　「この前見た夢。ヘンな荷台のくっついたバイクみたいなんで　　　　　……北に向かって……走って、走って……死んじゃう」裕司　　「面白いじゃない。これ、面白いよ」つみき　「何言ってんの、信じないの？つみきの夢」裕司　　「信じるよ。電話が鳴ってボカンだもの」つみき　「だったら行かないで、北の方には絶対に」裕司　　「大丈夫」　　　　　裕司、絵を横切って行く。

		一面のスカイブルー　　　　　戻ってきた裕司。　　　　　巨大な人間の目が光り、銀色の野生獣が飛びかかっている　　　　　－－－絵を背景にスッと少女が横切る。　　　　　草野つみき。つみき　「お帰り！」　　　　　戻ってきた裕司、ガレージのシャッターに描かれた絵！？を見ている。裕司　　「また塗り替えたのか」つみき　「うん、おととい。どう？」裕司　　「シュールだな。14歳の」つみき　「シュール？何、それ」裕司　　「おやじさんは」つみき　「学校」裕司　　「あ？また呼び出しか」つみき　「教室中全部塗り替えたの」　　　　　　　　　　カットイン－－－　　　　　ローズピンクに塗り替えられた教室。裕司　　「あのなァ……」　　　　　呆れる裕司に、つみき、郵便物を渡す。裕司　　「何でだろうね」つみき　「小包み預かってる、昨日届いてた。ニューヨークから」　　　　　ニューヨークからの小包み。
		同・マンション・階段　　　　　裕司と、つみきが登ってゆく。　　　　　歩幅が合わないので、つみきは駈けるようについてゆく。つみき　「ね」裕司　　「あ」つみき　「ニューヨークの公演、決まったの？」裕司　　「（頷いて）子供にゃ関係ねェの」つみき　「ア」裕司　　「なんだよ」つみき　「"うん、決まったよ"って素直に言えばいいじゃない。　　　　　　またカッコつけて。だから誤解されんのよ、若い子に」　　　　　３階の踊り場。裕司　　「黙ってろって、顔だけ宇宙人」つみき　「なによ、足だけ宇宙人」　　　　　裕司、３階の廊下を歩いていく。　　　　　つみき、屋上への階段を登る。つみき　「（裕司の後ろ姿に）裕司」裕司　　「あ？（ふり返る）」つみき　「なんかひらめいた」裕司　　「（ウンザリ）ひらめけ、ひらめけ。今度は何だってね」つみき　「（幼い霊感を必死にまさぐる）部屋に入ったらね　　　　　　……電話くるよ……出ちゃダメよ。爆発するから」裕司　　「はい！」
		同・マンション・裕司の部屋　　　　　裕司が入ってくる。　　　　　ワンルームの、広い部屋。電話が鳴る。　　　　　思わず苦笑して、電話を見る裕司。　　　　　受話器を肩にかけ、小包みを開ける裕司。裕司　　「はい」マネージャーの声　「何してる？」裕司　　「ニューヨークの彼女から何か送ってきた」　　　　　傍に、ニューヨークのカフェバーで、ヤンキーガールと　　　　　裕司が並んで撮った写真。マネージャーの声　「そのニューヨークの話だ」裕司　　「イエッ。この娘も待ってるぜ」マネージャーの声　「公演が中止になった」裕司　　「－－－！」マネージャーの声　「プロモーターのロビンソンから連絡が入って……、　　　　　　まだ世界に通用するアーティストじゃないそうだ」裕司　　「この間のコンサート見たって？」マネージャーの声　「見た上でのあちらの判断だ」裕司　　「（ダダをこねるように）そのロビンソンおじさんだけが　　　　　　ニューヨークのプロモーターじゃないでしょ。　　　　　　やらないうちから何だよ、どれぐらい通用するか　　　　　　確かめにいくんじゃなかったの？」マネージャーの声　「しょうがねェだよ、失敗は許されないんだ。　　　　　　どれだけ金がかかると思ってるんだ」裕司　　「……」マネージャーの声　「スケジュールがあいちゃったな。どうする？」　　　　　裕司、写真の彼女を見る。裕司　　「（ムキになって）ニューヨークが俺を待ってるんだ。行くよ、俺は」　　　　　受話器を置く。　　　　　小包みを開けた－－－途端に、バーンと破裂。裕司　　「－－－！」　　　　　粉と紙吹雪が飛ぶビックリ箱。　　　　　SAYONARA 　　　　　と手書きされた旗が立っている。女の声　「サヨナラ」裕司　　「……」　　　　　ひっそりと笑う裕司。
		部屋のバスタブで入浴する裕司　　　　　ニューヨークのガールフレンドとの写真を引き裂いて捨てる裕司。裕司　　「ニューヨークは俺を待ってないか……」　　　　　裕司バスタブにもぐりこんでいく。
		旅支度の裕司（ふかん）　　　　　大きな皮のトランクにつめられた荷物、服　　　　　－－－トランクのふたをして、毛布をくくりつける。　　　　　天窓からつみき。つみき　「どこ行くの？ニューヨーク？」　　　　　裕司、見上げる。　　　　　天窓に顔を出しているつみき。裕司　　「どっか旅行ってくるよ」つみき　「どっかって」裕司　　「空のきれいなところ」つみき　「だめ！」裕司　　「何で？」つみき　「死んじゃう」
		マンション屋上　　　　　つみきの絵－－－広い草原に、放牧された牛、転がっているサイドカー。　　　　　あお向けに倒れている足の長い男性。　　　　　そばでつみきに似た少女が見下ろしている。　　　　　青空が屋上いっぱいに広がっている。　　　　　中心に描かれた銀色の飛行物体が青空に浮いている。　　　　　それにかぶせて、つみき、裕司の声。つみきの声　「この前見た夢。ヘンな荷台のくっついたバイクみたいなんで　　　　　……北に向かって……走って、走って……死んじゃう」裕司　　「面白いじゃない。これ、面白いよ」つみき　「何言ってんの、信じないの？つみきの夢」裕司　　「信じるよ。電話が鳴ってボカンだもの」つみき　「だったら行かないで、北の方には絶対に」裕司　　「大丈夫」　　　　　裕司、絵を横切って行く。