■ 1986.2 K2
随分前に日が落ちている夜の繁華街。
きらびやかなネオンで飾られたゲームセンター。
まだ小さな子供たちが、楽しそうに騒いでる。
まるで天国にでもいるような気分で。
まわりの物音や、風のにおいや、人の気配ま
でも気付かないほどに、テーブルにうめ込ま
れたブラウン管に張り付いている。

Game Overすれば
ある奴は、床にほほをこすり付けて手探りで
自動販売機の足元をくすぐってる。
ある奴は、スタジアムキャップを深く斜めに
かぶって、メインStreetを流れてくる大人達
にねだっている……。
そしてまたGame Start。

彼等の頭の裏には、もうひとつのブラウン管
がうめ込まれている。
教えられた夢、親父の夢、現実、etc…
「今どき、宇宙飛行士になりたいなんて言う
馬鹿な奴はいないよ」
「一流大学から、一流企業」
そんな事、感じた事もないはずなのに。
Game OverすればGame Start……。
Game Over Game Start……。
Game OverすればGame Start……。

P.S.
かぶと虫を見て1500円が歩いていると言う
人がいる。
デパートは、立体的な昆虫図鑑だと思い
込んでいる奴がいる。
田んぼを走りまわってゲンゴロウをとる時に、
気を付けないとヒルに足をかまれてしまうな
んて、知らない奴がいる。
缶ジュースを買う時、100円玉と1円玉を選
ぶめんどくささから、1円玉をその場に捨て
る奴がいる。
1円玉を20枚以上使いたい時は、相手がそれ
を認めなければ金として成立しない、と法律
で認められてしまった。

そして何年か後には、10円玉も相手にされな
くなるだろう。
ずーっと昔、文化が何か所から発生し、散
らばって行った……。
今、散らばった文化がひとつに集まろうとし
ている。同化しようとしている。

それから人類がいなくなる……。