■ 1986.10 K2
不都合で 不可解で 不安な事ばかりが
頭の中を走り回る夜が続きました。
それは
きまって「くそったれ」と思うくらい寝苦し
い暑い夜です。
眠ろうとすればするほど
えーと、ひつじが1匹、ひつじが2匹、ひつじが3匹……
何かに苦しんでいる様子なんだろうけども
これといって自分に心当たりがないのが
余計にまばたきの数を増やします。
時間の無駄だと思って ビデオデッキを鳴ら
すのも もうとっくに試みましたが、余計に
目が冴えてしまうだけで、主人公の笑顔も、
ちっともおかしくありません。
やっぱり仕方ないから
えーと、ひつじが38匹、ひつじが39匹、ひつじが40匹…
楽しかった思い出を、いっぱい思い出す方法
も、今じゃ出て行った彼女の行方を捜したく
なるだけで、
また、
不都合で 不可解で 不安な事ばかりが
頭の中を走り回る夜が続きました。
と?……突然
「言っちゃあ悪いが僕は、変わり者でも、鼻
つまみ者でも、何でもないんだぞ」
と思い込もうとする気持ちといっしょに
ひつじが1015匹、ひつじが1016匹、ひつじが1017匹…
「あーもういやだ、誰か何とかしてくれ、誰
か助けてくれ、誰か僕を眠らせてくれ!」
大声で叫んでいたら、隣のおやじに怒られた。
えーと、ひつじが5861匹、ひつじが5862匹、ひつじが5863匹…

僕の理想の女性を形造って、彼女と2人でパ
ラダイスを探しに行くStoryを、1時間30分
の10本立て位でまとめてみる事はおもしろ
いと思いついて、空想にふけってみた。
すると
NEW YORKにも行けたし、
LONDONにも行けたし、
パリもホンコンもシベリアも雲の上も海の底
までも行けたので、これはやったネもうけも
んだと感じて、忙しく空想していくうちに…


僕はやっとみつけたのです。
結局、自分だなあ…って。
結局、自分が頑張ンないと、どこに行ったっ
て、そこはパラダイスにならないって。
僕の理想の彼女も「その通りネッ」と言い
ました。
じゃ、逆にいってみたら、どこだってパラダイ
スにする事ができるんだネ。
その夜
10日目の夜に、やっと僕はぐっすり眠れました。

どこだってパラダイスにする事ができるん
だネ。
                  1986.8.18