■ 1987.3 K2
何の根拠もないけれど
何のリアリティーもないけれど
僕は何でもできると思っていた
どんな事でも、やればトップに立てると思っ
ていた
まるで聖徳太子のように……一度に幾つもの
事を聴き入れる耳を持っていると思っていた
野球をやっていれば、清原よりはホームラン
を打てるだろう
ボクシングをやっていれば、モハメド・アリ
より強いだろう
ちょっと大げさな「空自信」ってやつで……
ちょっと気障な生き方ってやつで……
一度に幾つものことを軽くCoolにこなして
しまう奴に、憧れと美しさを感じていた
話をする時の頭の角度も、いつもシャープで
きまっている奴
酒を飲んで騒いでいても
いつもひとりCoolな奴
いつも客観的な瞳を忘れない奴
そんな奴が好きだった……


だけど今の僕は違う
たくさんのことをこなすよりも
酒に頼りたい時は頼ればいい
大騒ぎをして眠ればいい

好きなことは、ひとつでいい
自分の夢は、ひとつでいい
自分に自信が持てる、かっこいいと感じる場
所が、ひとつあればいい
その場所を愛し、苦しみ、楽しみ、費やして
ひとつの型をつくりあげれば、それが最高さ

一旦その場所を離れれば
考えられないほどかっこ悪くて、淋しくて、
どうしようもない奴で、情けない
そんな奴になりたいと思っている
ターゲットは ひとつしかない
その場所でくたばるまで踊りたい

そんな奴になりたいと思っている

かっこいい「Singer」って奴に……