■ 1988.1 K2
僕は生きる事を考え過ぎている。
人の事を思い過ぎてしまう。
いつもそうしていないと、十分になれない。
夜、寝る前に、今日も1日そうしていた事を
確かめられないでいると、不眠症になる。

眠れない夜は3年分長い。
天井が落ちてくる。電話が鳴りっぱなしだ。
酒がまずい、女が邪魔になる。肌のぬくもり
が、焼きたてのChickenの様にボヨボヨで
つきささる。

僕は千個の切傷を持っている。
23階のベランダが、またげてしまいそうにな
る。幼い頃ばかりを思い出す。いやな奴の顔
が、まつげをチリチリさせる。悪意を思いつ
く、キザな奴の気持ちが、わかってしまいそう
になる。
両手に涙がいっぱいで、
両手に涙がいっぱいで。


ひでえ女を好きになる。
冷たい女に目をあわせる。
なぐさめられるのが、やなだけで、ひでえ女
を好きになる。
こんな奴にはなりたくないと思いながら成長
する。そして最後に助けてやりたくなるだけ
で、あいそつかれて離れてしまう。
千個の傷がふえてゆく。
千個の傷がふえてゆく。


両手に涙がいっぱいで、
両手に涙がいっぱいで。

僕はいろいろ受け入れる。良いも悪いも新鮮
で、いろんな驚きをくれるから。
感じながら変化してゆく。本で教えられても
意味がない。
感じてみなけりゃ、わからない、つまらない、
形あるものは、ころがって変わっていくべき
で…。
髪型が変わっていくように、
洋服があせていくように、
形あるものは、変わっていくべきで……。


両手が涙でいっぱいで、
両手が涙でいっぱいで。


10年前は10円でキャンディが2つ買えたけど、
今は1つも買えない。
時は価値を憂えてゆく。
人は痛みを忘れていく。


両手に涙をためこんで、
両手に涙をためこんで。
決して人には見せない、
決して誰にもおしえない。
生きる事を考えている、
人の事を思っている。
僕の想いは自然だ、
僕の想いはきれいだ。
思う様にやってれば、きっと最後に笑える。
こんな毎日が好きでたまらない。