TAKE IT EASY Story
scenario #12

ホテル・廊下
     見張り役の圭吾が廊下のソファに横になっている。
     裕司が近づく。圭吾のヘッドフォンはずす。
     裕司、耳元で、「わ!」と驚かす。
     もともと気弱な圭吾、1人で裕司と対峙するとびびってしまう。
裕司  「……お早う」
圭吾  「(安心して)ね、朝メシ食ってけよ。
      うまい店知ってんだ。イカソーメン好き?」
裕司  「好き」
     と手を差出す。
     握手する圭吾。
圭吾  「飛行機まで時間がまだあるから、行こう−−」
     思わず苦痛に顔を歪める。
     裕司、圭吾の骨が折れる程、握りしめる。
     すさまじい握力。
裕司  「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、教えてくれる?」
圭吾  「はい……」


グラスハウス・表
     ガラス工芸品の作業、展示場。
     仕切のガラス越しに、中の作業が見えるようになっている。
     『作 氷室麻弓』のプレートと共に。
     麻弓のガラス工芸品が展示されている。
     ブラリと現れた裕司、中を覗きこむ。
     麻弓が、脇目もふらず取り組んでいる。
裕司  「……」
     麻弓、フッと仕切のガラスの方を見る。
     裕司がニッと笑う。
麻弓  「……」
     無視する。
     暫くして、ガラスの方を見ると、もう裕司の姿はない。
     思わず目で探す麻弓。


街の骨董品屋
     洋館の前を歩いて来る裕司。
     骨董品屋の手前でふと立ち止まる。
     店内にカップル、警官の池谷とその妻のレイ。
池谷  「それじゃ、この大事なレコードとギターとこれだけお願いします。
      じゃ、これだめね……残っちゃったけど、いいね」
     おやじから金を受け取り、出て行く。
     見送って、店に入っていく裕司。
     店の隅に置かれた古レコード。
     1枚1枚手にとってみる裕司。
     おやじ、近づいて来て不思議そうに裕司を見つめる。


グラスハウス・前
     大きな布袋のバッグをかかえた麻弓が出てくる。
麻弓  「(店に)お疲れさま。お先に」
     歩き出す。
     待っている裕司に気づく。
     麻弓、無視してズンズン歩く。
     軽い歩調でついてゆく裕司。
裕司  「七変化ってあるじゃない。
      三つ見せてもらったんだけど、あと四つ見せてよ」
     麻弓、キッとなって。
麻弓  「馬鹿にしないでよ、ちょっと有名ならどんな女でも引っかかると
      思ってるの?」

裕司  「そんな色メガネでみるなよ」
麻弓  「色メガネしてんの、そっちじゃない!」


市場
     魚屋の筋を歩く麻弓、つきまとう裕司。
     魚屋に並べられた魚。
     麻弓、カニをとる。1匹、2匹、3匹、4匹、5匹、6匹、7匹。
     あきれて見ている裕司。
裕司  「そんなに買ってどうすんの?」
麻弓  「ほっといてよ」

     八百屋。
     ジャガイモもたくさん買う麻弓。
裕司  「ダンシャクはいいの?」
麻弓  「(無視して)おいくら?」
     裕司の人なつこい笑い。
     サツマイモも勝手に入れてしまう。
     麻弓、仕方なく、金を払ってプイと出て行く。