TAKE IT EASY Story
scenario #13

街路樹通り
     前をスタスタ歩いていく麻弓。
     5、6歩後をついていく裕司。
     麻弓、立ちどまりふり返る。
麻弓  「(イライラ)どこまで、後をついてくる気」
裕司  「(立ち止まり)キミと話できるまで」
麻弓  「何の話!?」
裕司  「君のこと」
麻弓  「(!?と自分を指差して)私の?」
裕司  「東京のレコード会社やプロダクションが誘いに来てんの知ってるか?
      全部、青井がカットしてんだよ」
麻弓  「−−」
麻弓  「勘違いしないで、断ってもらうようにいったのはあたしよ!」
裕司  「(一瞬、虚をつかれる)……君が?自分で」
麻弓  「そうよ」
裕司  「……どうして?」
麻弓  「(きつく)みんながあんたと同じようにスターをめざして東京に
      出て行くと思ったら大まちがいよ!
ヒロシマのイモ」
     麻弓、裕司めがけてサツマイモを投げつける。
裕司  「……(グサッ)」
     麻弓、ふり返ると走り出す。
     裕司、追いかける。


市電通りの交差点
     麻弓、走ってきて、出発前の市電を手を振って止め、乗りこむ。
     市電、発車。
     裕司、やってくる。前を通過する市電。
     裕司、市電の後を追う。


走る市電・車内
     やって来る麻弓。
     フッと気付くと、−−裕司が追いかけてくるのが見える。
麻弓  「……ばっか」
     駆ける裕司。
     市電を追いかけて追いかけて、ついに追い越す。


市電の次の停留所
     市電を追いこしてやってきた裕司が停留所の石段の上で待つ。
     市電の到着。
     後ろの乗り口から飛び乗る裕司。
     前の降り口から降りる麻弓。


市電の中の裕司
     市電の窓から、向こう側に停車中の市バスに乗る麻弓が見える。
     裕司、市電の前からあわてて降りる。


バス停
     麻弓を乗せて出発するバス。
     麻弓、ホッとする。
     バスに張り紙。『気をつけよう、車のすぐ前、すぐ後ろ』


市街から郊外へ抜けるバス道
     バスを追いかける裕司。
     追いかけて、追いかけて、なんと追いつく−−
     バスの開いた窓に飛びつき、しがみつく。


走るバス・車内
     窓から乗車してきた裕司を乗客がポカンとして見ている。
     裕司、運転席の料金箱に百五十円入れて、麻弓の隣りにすわる。
麻弓  「……自衛隊呼ぶわよ」
裕司  「次は戦車追いかけるよ」
     バスが自衛隊の基地の前を通過する。


バスの終点
     バスの引き込み用に広い空地。
     つぶれたセメント工場の跡。
     遠くに駒ヶ岳が見える。
     バス止まる−−降りたのは麻弓と裕司の2人だけ。