TAKE IT EASY Story
scenario #14

つづらおりの山路
     麻弓、ズンズン歩く。
     珍しそうに辺りを見回す裕司。慌てて追う。


山路を上がった所で、突然
     広い草原が広がる。
     そこにUFOを模した不思議な建造物(つくりかけ)と、こじんまりした
     住居がある。

     遊んでいた5人の子供たちが、麻弓を見るとワッと駆け寄ってくる。
     「お帰り、お姉ちゃん」
     麻弓、子供たちと住居に入ってゆく。
     ポカンとして、見ている裕司。
     作りかけのUFO−−木の骨組に銀板や銀色のビニールを貼りつけている
     −−
の作業中である氷室画伯。
画伯  「(裕司を見て)……どうも?」
裕司  「どうも」
画伯  「自分は麻弓の父です」


住居
     夕食の支度をしている麻弓。カニを配っている。
     子供らが手伝っている。


同・外
     建造物の周囲を歩く裕司と画伯
画伯  「自分はね、マックがここに降りてくるのを待ってるんですよ」
     と、広い空地をこなす。
裕司  「マック、ですか」
画伯  「普通はUFOって呼んでますがね」
裕司  「ああ」
画伯  「北海道でもひんぱんにこの辺は飛んでるんですよ。
      (建造物をさして)おとりですわ、上空からみるとね、マックと全く
      同じなんです」

裕司  「はァ。本物がここに着陸したら、どうするんですか」
画伯  「そうですね。できればね、一緒に宇宙のはてまで連れてってほしいん
      ですわ。

      こんな狭い所で一生終わったっておもしろくないですもんね」
裕司  「……(微笑)」
画伯  「自分はね、昔航空自衛隊のパイロットやってましてね。
      毎日F4で(空を)飛んでたんですわ。日本の防空域って狭いでしょ。
      マッハ1とか2で疾ると、すぐUターンして、なんだか籠に入れられた
      鳥みたいでね。

      そんな時、未確認飛行物体、UFOに出会ったんです。都合5回ね。
      そういう人間は隊にけっこういたんです。
      我々は暗号コードでそれをMACQ、マッキューと呼んでいました」
     2人顔を見合わせて笑う。


家の前
     鐘(UFOとの交信用)を鳴らす裕司。
     ベンチにすわって話す画伯。
画伯  「その頃私、地上に降りても、麻弓の母親と、あとで下の子らの母親に
      なる女と2人の
女の間をいったりきたりしてましてね、
      ……なんかイヤだなァと思ってたら、2人の女とも

      蒸発してしまいましてね、もうスッキリして。
      3年前からこうやって好き勝手さしてもらってるわけですわ」
裕司  「じゃ、麻弓さんはあの子たちの母親がわりですか」
画伯  「まァ、そんなことになりますかね」
     子供(ユミ)が住居から出てくる。
ユミ   「お父さん、ごはんよ」
画伯  「(裕司に)さ、行きましょうか」
裕司  「いえ、ぼくは」
裕司  「どうぞ、どうぞ遠慮なく、大したもん出ませんから」
     裕司ついて行く。


住居
     食卓。
     1人に1匹ずつのカニ。
     むさぼり食べる手。カメラがパンして行く。
     裕司の前、一つだけふかしイモの皿
     −−裕司、麻弓をジロッと見る。
     無視の麻弓。
麻弓  「(画伯に)民川さん、おイモが好きなんですって?」
画伯  「ああ、そりゃよかった」
     裕司、ふてくされてイモをガブリ。
     吹き出す、麻弓。
     裕司ヤケになってワインにポシャッとやって食べる。
     一同大笑い。
     裕司も笑い出す。