TAKE IT EASY Story
scenario #16

ライブハウス・ステージ
     演奏する麻弓−−いつもの激しさがない。
     客席もいまひとつのらない。
     麻弓の演奏がだんだん投げやりになってくる。
     客たちも次第に体を揺らすのをやめて、棒立ちになる。
     かえで、切なそうな表情でステージの麻弓を見つめる。
     麻弓、ついにピアノの鍵盤をたたくだけになる。
     サックス、ベース、ドラムの奏者たち、わけのわからない表情で、
     音を出すのをやめていく。

     客席も静まる。
     泣きそうなかえでの顔。
     麻弓、ピアノを最後にピン、トン、ポンなんてたたいて立ち上がる。
麻弓  「ごめん、今夜はのらないの。アーティスト失格ね」
     客席に一礼するとステージをおりる。
     キョトンとした様子の客たち、演奏者たち。
     かえで−−不安と怒り。


ゆうせんAOI・中
     ソファーにけだるそうに座っている麻弓。
     怒りを冷たい表情の中にしまいこんだ青井が立っている。
青井  「どういうことなんだ、麻弓。お前らしくないな」
麻弓  「……」
青井  「驚いたな、もう少し大人だと思ってたがな」
麻弓  「裕司にどうしたのかって聞いているのよ」
青井  「あいつは今頃……」
     麻弓、驚いて振り向く。


裕司が目をさます−−朝
     立ち上がる裕司、あたりを見まわす。
     カメラ、空撮で立ち上がった裕司からグングン引いていく。
     −−荒涼とした岩場が広がる火山の頂上の噴火口(駒ヶ岳)
     急峻な岩肌、山のふもとに広がる広大な原生林。
     裕司、怒りがこみ上がる。
     ギリギリのパワーを生む。
     サバイバルへの闘志。
     裕司、決心して急峻な岩壁にしがみつく。降りる。
     危険な岩場を慎重に降りてゆく。
     途端に、手が滑り、足がもつれた。
     ザーッとすさまじい勢いで岩肌を滑り落ちてゆく。
     落ちる、落ちる、落ちる。


原生林の中
     おどろおどろしい漆黒の樹々。
     かすかな木洩れ陽。
     歩く裕司、ひたすら歩く。
     疲労と空腹と痛み。
     路なき路をあてもなく、さまよう。


原生林の切れ目を流れる渓流
     原生林をぬけた裕司がやってくる。
     川の流れてく方向に歩けばいい
     −−裕司、川の中を泳ぎ出す。

     急流の深みを泳ぐ裕司。

     滝。
     先に道はない。
     裕司、意を決して飛び込む。


グラススタジオ
     麻弓が火の玉をふくらます。
     冷却。
     水からガラスを引き上げる−−失敗だ。
     麻弓、たたき割る。イライラ。


山(駒ヶ岳)の中腹までジープを飛ばす麻弓
     中腹に車を止めて、降りる。
     山頂まで続いている険しい岩肌をじっと見つめる麻弓
     −−不安と哀しみの表情。


山あいを流れる川に鉄橋がかかっている
     川を流れてくる裕司。
     鉄橋のコンクリートの橋げたに上がる。
     橋げたをのぼっていく。
     路線に出た。
     裕司、路線づたいにヨロヨロと歩きだす。


採石場
     列車走ってくる。
     路線づたいに歩いてきた裕司、セメントの原料の土を町まで運搬する
     トロッコ列車につかまる。

     最後の力をふりしぼって、トロッコにつまれた砂の上にはい上がり、
     バタン。



裕司を乗せたトロッコ列車が街に向かって走っていく(夕景)
     砂の上に立つ裕司。