TAKE IT EASY Story
scenario #17

BAR・「K・CAN」外−−夜・雨
     窓にしずくがかかる・雨が打ちかかっていく。


同・中
     カウンターをはさんで麻弓と池谷。
     それ以外の客はいない。
     カウンターの上には、バーボン。
     オンザロックで飲んでいる麻弓。
     洗いものをする池谷。
麻弓  「マスター」
池谷  「ん?」
麻弓  「レイ。また戻ってくるんだって」
池谷  「ああ。今度は本気で歌手やめるみたいな」
麻弓  「え!?−−あ、そう」
麻弓  「レイはいいな。帰るところがあって。
      あたしなんて帰るとこないもんね」
池谷  「行くところ見つけた?」
麻弓  「自信ないな……もう年だもの」
池谷  「マキュウらしくないな」
麻弓  「おかしいわね、あたしじゃないみたい。
      もう一度会いたいなんて」
池谷  「彼か」
麻弓  「向こうは気まぐれなのにさ」
     圭吾が入って来る。
圭吾  「麻弓、やっぱりここか、雨だしさ。送ってくよ」
麻弓  「(キッとなって)うるさいわね、ほっといてよ」
圭吾  「青井さんにおこられちゃうんだよな、俺も。しっかり見張っていないとさ」
麻弓  「どうしてあたしが青井に見張られてなきゃなんないのよ」
圭吾  「とにかくジープこっちに回してくるから」
     圭吾、出て行く。
     麻弓、ため息ついて頭を抱える。
池谷  「(麻弓を見て)似合わなくなったね、マキュウが」
麻弓  「??」
池谷  「まゆみ……いい名前だ」
麻弓  「ありがとう(微笑)」
     麻弓、席を立って出ていきかける。
麻弓  「マスター」
池谷  「ん?」
麻弓  「マスターもこの街、似合わないわね」
池谷  「警官なら、似合うかな」
     麻弓、微笑んで出ていく。


倉庫街通り−−夜
     霧のような雨。     (雷鳴)
     麻弓がフラリ、フラリと歩いて雨にうたれる。
     ふと、足を止める。
     向こうに男の人影。
麻弓  「(ビックリする、が)」
     裕司だ。
     満身創痍の態でズブ濡れになって立っている。
     裕司、ニッコリ笑う。
     麻弓、駆け寄る。
     裕司、麻弓を抱きしめる。
     2人の向こう、通りの奥の角をまがるヘッドライト。
     圭吾のジープだ。


走るジープ
     運転する圭吾。
     ヘッドライトに照らし出された、抱き合う裕司と麻弓の姿が目に入る。
     一瞬、圭吾、どうしていいかわからない。
     急ブレーキ!!キューンという音を響かせて−


濡れた路面をすべるようにジープが2人に突っこんでくる
     2人、お互いをつき飛ばす。
     ジープ、その間を間一髪通りすぎて、消火栓に当たって停まる。
     路上に倒れた麻弓と裕司−−2人とも起き上がらない。


青井インターナショナルビル
     圭吾の運転するジープから、健次が意識不明の麻弓を運び出す。
     青井のところへ運んで行く。
     青井、圭吾をはり飛ばす。
青井  「あれほど言っといたのに」
圭吾  「すいません」
青井  「奴は?」
圭吾  「ここに電話している間に……」
健次  「俺が行った時には消えてました」