TAKE IT EASY Story
scenario #18

「K・CAN」中・朝
     店内の隅にある小部屋。
     のぞきこんでいた女−−池谷レイ
     ホッとしたような笑顔。
裕司  「麻弓?」
     と、飛び起きる。
レイ  「(裕司の口をおさえて)シーッ」
裕司  「(低く)麻弓はどこ?」
レイ  「大丈夫、いま、池谷が探している。
     あなたをここにいることもヒ・ミ・ツ。
     でもなんでコソコソするのかね、警官なのに」
裕司  「−−あなたは?」
レイ  「ジャーン。警官の妻」
裕司  「……ああ。歌手やっておられるとか」
レイ  「(微笑)テレビ局の廊下でね。スレ違ったことあるよ。
     1回だけ、テレビ出たことあるの」
     池谷が入ってきて、素早くドアを閉める。
レイ  「お帰り、ダーリン」と抱きつこうとする。
池谷  「あとで、あとで、(裕司に)大丈夫か」
裕司  「(頷いて)麻弓は?」
池谷  「青井がどこかに隠したみたいだな」
     裕司、パッと立ち上がる。フラッとするが、ドアへ向かう。
     池谷が立ち塞がる。
池谷  「待て、若い奴らがお前を探してる。
      今度つかまったら、山の上に置き去りにされるだけじゃすまないぞ」
裕司  「ありがとう。でももう僕にも止められない」
     裕司、出てゆく。


街路樹通り
     圭吾、健次たちのジープ、バイクが、スピードをおとして、
     裕司の姿を探しながら走っていく。
     走り去った後、通り脇に姿を現す裕司。
     通りを横断して、倉庫街の路地へ。


倉庫街の路地(A)
     裕司が走り抜ける。


倉庫街通りのバイクショップ
       (ラジオから聞こえる『積木の絵具』)
     ひとり店番のかえでが作業帽をかぶってサイドカーを調整している。
裕司  「きれいにしてくれてんの?」
     ふり返り、裕司に気づくかえで。
かえで 「あんたのサイドカーなんてきれいにするはずないだろ。
      走ったらぶっ壊れるようにしてんだよ」
裕司  「(かえでに)麻弓は?」
     かえで、首を振って、裕司をにらむ。
かえで 「麻弓を連れてったら許さないね」
     −−その鋭い眼光。
裕司  「OK、でも道を選ぶのは麻弓だよ」
     サイドカーに乗ってスタートさせる。
裕司  「預かってくれてありがとう」
     工具をなげつけるかえで。


オリエンタル・キッチン店内
仲根  「ああ、……今度ぼくと……ええ……春巻、あと20コ下さい」
久美  「春巻20コですね。少々お待ち下さい」
     仲根、上気したまま久美の後ろ姿を見守る。
     健次と若者たち(圭吾、和人と別グループ)がやってくる。
健次  「(仲根に)あいつ、どこにいる」
仲根  「あいつって誰だ」
健次  「(低く)民川だよ(大量のパックを見て)やつのエサだろ」
仲根  「(低く)馬鹿。牛にくわせるんだよ」
健次  「牛が春巻を食うのかよ」
仲根  「うちのは中国産だからな」
健次  「どこにかくまってる」
仲根  「こっちがききてェよ」
久美  「お待ちどうさま!春巻20コ、ありがとうございます」
仲根  「(一転して明るく)あ、どうも」
     健次ら、出てゆく。
仲根  「ちょっと待て」
久美  「お客様!」
仲根  「はい!?」
     と振り返る。
久美  「(はにかんで)……あのォ」
仲根  「−−は?」
     ドギマギ。
久美  「ちょど2千8百円になりますが」
仲根  「ア、……」


同・表
     健次らのバイクが出ていく。
     追いかけてくる仲根。
     仲根のトラクターが停まっている。
裕司の声 「へい!そんなにたくさん買わないと、あの娘としゃべれない
      のか!?」

     仲根、キョロキョロ、声の出どころを見渡す。
裕司の声 「下だ、下だ」
     トラクターのシャベルから足がオイデ、オイデする。
     裕司があお向けでトラクターのシャベルの中にねころがって隠れている。
仲根  「よォ、何やってんの?お前」
裕司  「ちょっと、相談中」
仲根  「(ポカーン)」


街外れの路上
     トラクターで来る仲根。
     続いて裕司のサイドカー。
     2人降りて走って行く。