TAKE IT EASY・EXTRA Story

scenario2 #9
第四稿(月刊シナリオ・シナリオ作家協会版)

ハンバーガーショップ

     広い店内。テーブル席が20席ほど。
     そのカウンター寄りのテーブルで。
     頭をかかえこんでいる裕司。
     仲根、今までのヌーボーとした顔とうって変わって緊張した顔。
     カウンターの女(山田久美)を盗み見る。
仲根  「頼むよ、コーチ。お前いかにも、女扱うの馴れてるみたいじゃない」
裕司  「あのなァ……(頭かかえこむ)……実際、ホント、あれですよ、
      荒くれどもが何人襲ってきてもビクともしないやつがさ、……なんで?
      ね、なんでか教えてよ、なんで、そんな自信ないわけ、
      たかが女の一人」
     カウンターで忙しく働く久美。
     ボーッとして見ている仲根。
仲根  「……俺、商売女は何人か知ってるけどさ、素人の女って
      全然駄目なんだよな。
      なんせさ、雑誌で"恋"って字を見るだけで顔が火照ってよ」
     ガタン!とテーブルで額を打つ裕司。
裕司  「……お願いしますよ、日本史の仲根さん」
     ションボリしている仲根。
     裕司、呆れ返るが、つい親切心がでて、仲根の隣に坐る。
裕司  「(囁く)恋のノウハウ、教えてやる」
仲根  「(囁く)よし!」
裕司  「まず目を見る。女の目」
仲根  「目を見て、何て言うんだ」
裕司  「何も言うな。男は黙って目で勝負」
仲根  「わかった」
裕司  「次に、女の目がうるんできたら、手を握る」
仲根  「手を?!」
裕司  「そう。両手で包むようにやさしく。次第に強く」
仲根  「女が逃げたらどうする」
裕司  「馬鹿!この馬鹿!そんなこと考えてるから、
      どの女もひっかからねェんだ」
仲根  「わかった。積極的にいく」
裕司  「OK。ロープに追いつめて、打って打って打ちまくる」
仲根  「ちょっと待て。お前、何の話してるんだ」
裕司  「……恋はKOしかないってことだよ。判定も引き分けもない」
仲根  「……(感心して)」
裕司  「恋をするのはリングの上に上がることだ。レフェリーはいない。
      勝か負けるか駆け引き自由。あとはあんたの腕次第」
仲根  「へェ。お前ホント恋のプロだな」
裕司  「今度は俺がセコンドでついてるんだ。負けたら承知しないぞ。行け!」
     仲根、勇気を出してカウンターに向かう。
     見守る裕司。
     仲根、久美の前に立つ。緊張。
久美  「(明るく清楚に)いらっしゃいませ」
仲根  「……どうも」
     久美を見る。
久美  「(笑顔)お久しぶりですね」
仲根  「……(久美の目を見る)」
久美  「(愛くるしく)ご注文、おきまりですか」
仲根  「(うわの空)……はい……目で勝負」
     ガタン!と椅子から転がり落ちる裕司。