TAKE IT EASY・EXTRA Story

scenario2 #11
第四稿(月刊シナリオ・シナリオ作家協会版)

同・ホテル通用門前の路上

     出てきた麻弓を、十数人の男たちが迎える。
     サイドカーに、圭吾。
     バイクの頭が健次、ボクサーの卵たちの頭が、大男の和人。
     離れて、かえでもいる。
全員  「お疲れ」
麻弓  「(戦闘服みたいなかえでに)似合うじゃない」
     かえで、はにかんだように微笑。
麻弓  「(圭吾に)どうしたの」
圭吾  「渋くてカッコいいだろ。スターの送り迎えにゃちょうどいいと思ってな」
麻弓  「(サイドカーに乗り込んで)わざわざ作ってくれたの」
圭吾  「輸入したんだよ、隣の農協から」
     ドッと笑う男たち。
     全員、出発−−の寸前、仲根と裕司が駈けてくる。
     バイクやジープから飛び下りて、二人と対峙する男たち。
     裕司、麻弓に微笑みかける。
     プイとそっぽ向く麻弓。
仲根  「いつからカッパライまでやるようになった」
     圭吾、和人の陰に隠れる。
健次  「珍しいモンだから借りてるだけだよ。今度お前ン所
      突っ込む時に持ってくよ」
麻弓  「ちょっと、どういうこと」
健次  「気にすんな」
圭吾  「(裕司をこなして)こいつのもん」
麻弓  「−−(ムッとして圭吾を見る)」
裕司  「いいんだよ、気に入ったらくれてやるよ」
麻弓  「冗談」
     と、サイドカーから降りる。
和人  「言うなよ、この野郎。乞食じゃねェぞこっちは」
仲根  「変わりゃしねェ」
     和人、いきなり仲根にハンマーパンチをふるう。
     仲根、寸前でダッキングして、左ボディーブローを三発和人にぶち込む。
     テクニック、スピード、パワーとも卓抜している。
仲根  「(うずくまる和人に)しょうがねェな、これじゃスパークリングに
      ならねェよ」
     他の屈強な男たちが襲いかかろうとするのを、健次がとめる。
健次  「(仲根に、裕司をこなして)こいつもゲームに入れていいのかよ。
      ケガでもさせたらヤバイんじゃないのか」
仲根  「こっち来りゃ、死ぬって言われたんだってさ」
裕司  「血が止まるほどのショック、どっかにないかね」
健次  「変わってんな、こいつ」
圭吾  「(裕司に)なんかの間違いだろ、え?有名人がこんな所
      ウロチョロしてさ。用心棒なんかつれて、目障りだよ」
裕司  「目障りはお互いさまなんじゃない」
圭吾  「なに!てめェみたいな作られたスターはよ、東京あたりで
      シャナリシャナリのしてりゃいいのよ」
裕司  「(笑う)作られたスターだって」
圭吾  「本物のスターってのはな、麻弓のこと言うんだ」
     麻弓が、いきなり圭吾を張り飛ばす。
麻弓  「何度も恥かかすんじゃないよ」
     と、ジープに飛び乗る。
麻弓  「帰るよ」
裕司  「待てよ。ちょっと話さないか」
麻弓  「(振り向いて)笑うよ。ちゃんと話なんかできるの」
     裕司を敵意の眼で見ているかえで。
裕司  「(ニヤッと)おっトゥ。やっと話しかけてくれたね」
麻弓  「遊びにきたんなら、もっとガキっぽい所で演説ぶってなよ」
裕司  「それ!そういうところがファンタスティック。
      ストレートがビンビンくるなァ」
     と、仲根を見る。苦笑する仲根。
麻弓  「−−こんな所でカッコつけたってはじまらないよ」
裕司  「そっちも相当なもんじゃないの」
麻弓  「こっちは普通にやってるよ。あんたはただのカッコマン」
裕司  「そうかな、一度試してみたら」
麻弓  「冗談」
     ジープの運転手、スタートする。
     裕司、サイドカーに飛び乗る。
     阻もうとする男たち。
     仲根が力づくで排除する。
     乱闘になる。
     そのスキに裕司がジープを追おうとした時、風のように
     かえでが飛んできて、ナイフをつきつける。
裕司  「−−つみき?!」
     裕司にナイフをつきつけるかえで。
裕司  「(?!となって)……男のお子さん?」
     かえで、異様な目で、裕司を睨みつける。
裕司  「……」
        × × ×
     (一瞬のフラッシュ)
     つみきの描いた絵。
     死んでいる裕司の傍に、つみきらしい少女が立っている。
        × × ×
裕司  「イエッ……君が地獄よりの使者か。よろしくな」
     裕司が急発進してカーブした途端、振り落とされるかえで。
     乱闘の集団から、健次ら三人が抜け出し、それぞれのバイクに
     飛び乗って追う。


夜の道

     走るジープ。
     追う、裕司のサイドカー。
     さらにそのあとから、健次らの三台のバイク。
     馴れぬ道で、裕司のサイドカーが遅れる。
     三台のバイクが猛然と迫り、サイドカーの走行を妨害する。
     特に健次のスピードとテクニックは素晴らしく、
     まるでバイクのショーを見ているようだ。
     一瞬見とれた裕司、サイドカーをガードレールにぶつけてしまう。
     追走してきた健次のバイクがぶつかる
     −−寸前、ジャンプしてサイドカーをとびこえ、見事に着地した。
     裕司、パチパチと拍手する。
     健次、携帯無線で何か応答して、裕司に近づく。
裕司  「アーティスト」
健次  「ただの曲乗り団」
裕司  「こんな所でくすぶってないでさ、レースか何か出て、
      メジャーになったら?勿体ないよ」
健次  「……」
裕司  「で、何?」
健次  「お前さ、……ちょっと何かヘンな男だな」
裕司  「みんなヘンじゃないの。仲根にしても、マキュウにしても、……お宅も。
      つまんない町と思ってたけど、面白いじゃない」
健次  「もっと面白い人がお前に会いたいって」
裕司  「……へェ」
健次  「青井って人」