TAKE IT EASY・EXTRA Story

scenario2 #14
第四稿(月刊シナリオ・シナリオ作家協会版)

グラスハウス・表

     ガラス工芸品の作業、展示場。
     仕切りのガラス越しに、中の作業が見えるようになっている。
     作 氷室麻弓 のプレートと共に、麻弓のガラス工芸品が
     展示されている。
     ブラリとあらわれた裕司、中を覗きこむ。
     清楚な作業着の麻弓が、脇目もふらず取り組んでいる。
裕司  「……」
     麻弓、完成間近の作品を突然叩き割る。
     相棒が、謝る。
     工程ミスがあったらしい。
     妥協を許さぬ麻弓の厳しい顔。
     見守る裕司。
        × × ×
     麻弓、フッと仕切りのガラスの方を見る。
     裕司が、ニッと笑う。
麻弓  「……」
     無視する。
     暫くして、ガラスの方を見ると、もう裕司の姿はない。
     思わず目で探す裕司。


町をブラつく裕司

     暇つぶし。
     煙草屋。
裕司  「マイルドセブン」
     二百円出して、手を差出す。
     店番の超肥満のおばあちゃん、裕司をジロリと見て、何を思ったか、
     差出された裕司の手相を見る。
     ド近眼の眼でジッと覗きこむ。
裕司  「……?!」
     ウーン!とうなって考え込むおばあちゃん。
裕司  「おばあちゃん、マイルドセブン」
おばあちゃん 「ウリ二つってあるもんだねェ」
裕司  「え?」
おばあちゃん 「死んだ爺ちゃんとそっくりの手相だよ。
          ……一途でねェ。いい女見るともう一直線」
     と、ハイライトを裕司の手にのせる。
裕司  「違うよ、おばあちゃん」
おばあちゃん 「爺ちゃん、これが好きでねェ」
     耳が聞こえないらしい。
裕司  「(肩をすくめて)元気出してよ、おばあちゃん」
     去る。
     制服警官をスレ違う。池谷。
池谷  「−−お?」
裕司  「あれ?……似合うじゃないスか」
池谷  「プロだもんよ」
裕司  「プロねェ……」


グラスハウス・前

     午後−−
     大きな布製のバッグをかかえた麻弓が出てくる。
麻弓  「(店に)お疲れさま。お先に」
     歩き出す。
     スッと歩み寄る裕司。
麻弓  「……」
裕司  「君、俺のお袋みたいだな」
麻弓  「……」
裕司  「逢うたびに地味になってくる」
     麻弓、無視してズンズン歩く。
     軽い歩調でついてゆく裕司。
裕司  「七変化(しちへんげ)ってあるじゃない。
      七変化(ななへんげ)か、どっちでもいいけど。
      三つ見せてもらったじゃない。あと四つ見せてよ」
麻弓  「……」
裕司  「(麻弓を指差して)パフォーマンス。一つ一つ新鮮だったよ。
      フー・アー・ユー?誰、君は?本当は何してる女(ヒト)?」
麻弓  「……」
裕司  「ぶっちぎりだよ。最高。ファンタスティック。マジカル・ウーマン、
      ……ウーン、あと何だっけ」
     麻弓、キッとなって、
麻弓  「馬鹿にしないでよ」
裕司  「なんで?!」
麻弓  「馬鹿にしてるじゃない」
裕司  「どこが馬鹿にしてんだよ」
麻弓  「絶対遊ばれないから!」
裕司  「遊ばれないって、遊んでもくれないクセにさ!」
麻弓  「なんであんたと遊ばなきゃいけないの」
裕司  「そんな色メガネでみるなよ」
麻弓  「サングラスしてんの、そっちじゃない!」
裕司  「ア、ア、言葉の遊び!」
麻弓  「マンガやってんじゃないのよ」
裕司  「マンガじゃなくて漫才だろ」
     周りの人が見ている。
     麻弓、逃げ出す。