TAKE IT EASY・EXTRA Story
scenario2 #18
第四稿(月刊シナリオ・シナリオ作家協会版)
住居 大きなダイニングテーブル。子供たちが席についている。 画伯と、裕司が入ってくる。 ワインの栓をぬいている麻弓。 髪を無造作に束ね、ラフな木綿のシャツとジーパン。 裕司 「……」 麻弓、裕司をチラッと見る。 裕司 「(咳払い)……一度、断ったんだけど」 ユミが、自分の隣の席をこなす。 その席は、茹でたブロッコリーが山ほど盛ってある。 裕司、苦笑して坐る。 麻弓がワインを注いで回る。 この家は子供もワインを飲む。 画伯 「じゃ、いただきます」 子供たち 「いただきます!」 子供たち、猛烈な食欲で食う。 パンを奪い合い、皿を叩き、時にはケンカとなって、まァうるさいこと。 麻弓は、我関せず黙々と食っている。 一人間のびした調子で食事を楽しむ画伯。 ユミ 「(裕司に囁く)お兄ちゃん」 裕司 「ん?」 ユミ 「お姉ちゃん、ガード固いでしょ」 裕司 「あ?」 ユミ 「オトコ嫌いで有名なの」 裕司 「……そう」 ユミ 「小学校でも評判」 裕司、ハッハッハと大笑いする。 全員が裕司をを見る。 裕司 「……失礼」 |
住居の外のテラス 離れてポツンと坐った裕司と麻弓。 コーヒー。 裕司 「……七変化。その四」 と、ニッと笑う。 麻弓 「もうこれでおしまい」 裕司 「惜しいと思うよ」 麻弓 「……」 裕司 「七変化、その五、その六、その七。見たいよ」 麻弓 「……(首を振る)」 裕司 「ここを出る気ないのか。君ならビッグになれるんじゃないのか」 麻弓 「……」 裕司 「家族を見捨てるのが恐いのか」 麻弓 「関係ないよ。私がいなくなりゃ役所で食わせてくれるし」 裕司 「何度かスカウトがきたらしいじゃない。青井がとめてるらしいけど、 あんなのぶっ飛ばしゃいいじゃないか」 麻弓 「……そんな簡単にいかないよ」 裕司 「じゃ、本当はもっと大きな世界でやってみる夢もってるんだな」 麻弓 「……」 麻弓、目を閉じて−−フッと気持ちが揺れる。 麻弓 「あんたみたいになりたくないんだよ」 裕司 「−−」 麻弓 「最初あんたが出てきた時、ちょっとだけ気がいったんだよね。 でもすぐにダメになったんじゃない?」 裕司 「……」 麻弓 「普通にやってないよね。無理して背伸びして、ゴテゴテに飾られて、 ……自然じゃないよ」 裕司 「……他人の話やイメージはどうでもいいじゃない。 君は、麻弓はどうなりたいの。君の夢は何だ」 麻弓 「……アーチストでいたいのよ、ナチュラルでいたいの。 だから、……今のままでいい」 裕司 「嘘つくなよ」 麻弓 「嘘じゃないよ」 裕司 「本当に今のままでいいのか。あのライブハウスの客を馬鹿にしてる じゃないか。それでも満足してるのか」 麻弓 「……」 裕司 「本当は、もしメジャーになれた時、俺みたいになるのがこわいんだろ」 麻弓 「……」 裕司 「実際の俺を見てどうだった。テレビやステージや雑誌に載っている 民川裕司じゃない俺。一切の自由がはく奪されたただのお飾り人形 だったか」 麻弓 「……」 裕司 「アイ・スタンド・アローン。誰にも頼らず一人で立ってる。 仲根もそうだ。大切な友達だ。君もそうだと思った。 だから−−好きになった」 麻弓 「……」 裕司 「夢、大事にしてくれよ。君のお父さんのように」 立つ。 麻弓 「……(ポツンと)カーネギーで歌いたいんだよね」 裕司 「(?!と)……カーネギーってニューヨークの?」 麻弓 「実力しか通用しないじゃない、あっちは、どうせなら ……ゴテゴテ飾られる日本じゃ歌いたくないよ」 裕司 「……」 麻弓 「……(フッと笑って)夢。……夢です」 裕司 「OK」 裕司、笑う。 麻弓も笑う。 ユミが顔を出す。 ユミ 「お姉ちゃん、お迎えきたよ」 |
住居の外 健次らのバイク、圭吾や和人らの乗ったジープが待っている。 住居から出てきた麻弓、ビックリする。 麻弓 「どうしたの、こんな大勢で」 つづいて出てくる裕司。 裕司 「こっちの迎えもあるんじゃないの」 麻弓 「……どういうこと」 裕司 「この町出て行けって言われてたのに居残ってるからさ。 −−(健次らに)そうだろ」 健次、麻弓をジープにこなす。 健次 「急ぎなよ。今日も二時から待ってる客いるぜ」 麻弓、ジープに乗る。かえでも乗っている。 かえで 「お早う」 うわの空の麻弓。 麻弓 「(健次に)馬鹿なことしないで」 健次 「(無視して、圭吾に)早くしろ」 圭吾が運転してスタート。 麻弓、振り返って裕司を見る。 一瞬の、その眼差。せつなく−−。 裕司 「(麻弓を見る)……」 一瞬、燃えて熱くなる。その眼差。 |