TAKE IT EASY・EXTRA Story

scenario2 #21
第四稿(月刊シナリオ・シナリオ作家協会版)

原生林の中

     雨の闇。
     おどろおどろし漆黒の樹々。
     低く唸るようなうめき声がきこえる。
     巨木の根っこにうずくまって、息も絶え絶えの裕司。
     ズブ濡れでガタガタと震え、意識は遠ざかる。
        × × ×
     朝。
     かすかな木洩れ陽。
     目覚める裕司。
     疲労と空腹と激痛。
     立ち上がる。
     路なき路をあてもなく、さまよう。
        × × ×
     昼なお暗い原生林はつづく。
     強烈な乾きにめまいがする裕司。
     それでも生への執着はすさまじい。
     歩く裕司、ひたすら歩く。
        × × ×
     渓流があった。
     裕司、まるで身投げでもするかのように飛び込む。
     水を呑み、全身を洗い、わずかに精気を取り戻す。
     脱出への手がかり。
     裕司、岸辺の巨大な朽木を苦闘の末、渓流にひきずりこむと、
     それにしがみつき、下ってゆく。
        × × ×
     激しい流れを朽木と共に下ってゆく裕司。
     やがて滝が迫る。
     裕司、迷うことなく身をまかせ、滝ツボに突込む。
     そのまま再び下流へ下ってゆく。
        × × ×
     原生林がきれて、視界が広がってくる。
     裕司、岸に上がって、歩く。
     突然、陽だまりの原野がひらけた。
     早い秋をつげる花や草。樹々の艶。
     大らかな自然に、風がそよ渡り、蝶が舞い、小鳥がさえずる。
     喜がよみがえる。
     指笛。
     それがこだまする。
     ポンポンポンと手拍子を叩く。
     こだまする。
     躍り上がるように身体をスイングさせる。
     不意に、唇からメロディがこぼれる。
     何か歌いたい衝動に駆られる。
     歌ってみる。
     同時に、遠く汽笛がきこえた。
     耳を澄ましてみる。
     やはり、汽笛だ。
     裕司、走り出す。原野を走る。


草源

     広大な草原の彼方に−−汽車が走ってくる。
     裕司、線路めがけて走る。
     汽車が通りすぎようとする。
     全速で走りつづけた裕司、汽車の最後部のデッキに
     しがみついて、飛び移った。


町に裕司が帰ってきた

     陽炎の彼方、石畳の上を裕司が傷だらけの身で歩いてくる。