ユー・ガッタ・チャンス Story
scenario #5


[30]横浜・ドリームランド
     パトカーが着いて、警官隊が殺到する。
     ジロー、裕司と夕子を警官隊から守ろうと飛び出す。
     混乱状態と思われた集団が、再び、ストリートロックミュ
     ージカルの群舞。裕司達を逃がすように警官隊の行く
     手をはばんで踊りまくる。
     やがて、曲が完奏。見事なエンディングが決まる。
        ×  ×  ×
     騒乱の後−−−−(夜)意気投合した裕司とジロー。
ジロー 「お巡りと喧嘩する為に群れつくってゴッコ遊びしてる
      んじゃないぜ」
裕司 「作られたスターは一人じゃ何もできないよ」
     笑いあう二人の囲りを夕子が楽しそうに歩いている。
ジロー 「前にも字を間違えて来た奴がいたぜ。店の名前を勝
      手に使うなって力んでやがんの。伊丹っていったかな、
      昔、その店で働いていたって言ってたな。チンケな野
      郎で今、本牧のリキシャってライブ・ハウスでマネージ
      ャーやってるよ」


[31]横浜・ライブハウス「リキシャ」
     看板。
 芸能界のジョーズ
 毒舌ロッカー
 貝塚吉夫 来演
[32]同・楽屋
     ボーイと話している吉夫。
吉夫 「伊丹って用心棒は、ここクビになったんだってよ」
裕司 「おっとオ」
吉夫 「但し、中華街の裏路行きゃいつでも会えるってよ」
夕子 「(不思議そうに吉夫の恰好を見て)あなた、何してる人?」
吉夫 「スキャンダル・ギャング……」
     ニヤニヤ笑ってみている裕司。
夕子 「ありがとう。シー・ユー・アゲイン」
     夕子、裕司の腕をつかんで出てゆく。
吉夫 「裕司!」
     裕司だけ戻ってくる。
裕司 「なに」
吉夫 「なにじゃないでしょ、民川さん。スキャンダル・ギャング
     の前にナマナマしい現場もちこむなよ。ステージ
     行って、どう言やいいのよ」
     裕司、笑って後ろ足で吉夫の尻を蹴る。
     吉夫も後ろ足で裕司の尻を蹴る−−−がとどかない。
吉夫 「おい……。真ン中の脚は俺の方が長ェんだ」



[33]ナイフ! ビュッと切りつけてくる
     咄嗟に避ける裕司。夕子を連れて逃げる。
     伊丹明雄がナイフを振り回して追いかける。アル中の
     気配。
     中華街の裏路。
     夕子がころぶ。かばう裕司。
     伊丹が迫る。
伊丹 「てめェ!遊戯楼の何だ!金は全部返したじゃねえか」
裕司 「ね、しっかり話きいてよ」
     伊丹の逆上がエスカレートして、裕司が危機一髪。
     裕司、身体をひねりざま、鋭い蹴り。
     伊丹、勢い余って電柱に追突する。
     そのはずみに一枚の看板が落ちてくる。裕司のコンサ
     ートのポスター。
     伊丹、ポスターに気がつき目をパチクリする。
     そして本物の裕司と見比べる。
     裕司、やむなくうなずく。
     伊丹、信じられないといった表情で起き上がる。
伊丹 「(バツが悪そうに)その民川裕司がなんで横浜遊戯楼
     に用があるの。あんた等の行くようなところじゃないぜ?」
夕子 「(心配そうに)ヤバイの?」
裕司 「かまわない」
伊丹 「OK、教えちゃう。ファンだから、でもその恰好じゃ行けないぜ」



[34]洋館の前
     タクシーがつく。
     執事風の男に案内されて中に入る裕司と夕子。タキシ
     ードとドレス。
     伊丹が手を振って見送る。