ユー・ガッタ・チャンス Story
scenario #7
[37]クルーザー・船室(キャビン) 象の群が走っている。ライオンが、カバが、キリンが、トラが走っている。 キャビンの中央にはアフリカの大草原がデザインされた巨大なテー ブル。 裕司 「(しげしげと眺めながら)どういう趣味をしているんだろう……」 テーブルで食事している本郷一佐、二佐、三佐。野菜料理だけのフル コースディナー。 一佐は無口な大男でパソコンに夢中。二佐はいかにもキレ者。小柄 でひょうきんな三佐は、しきりに夕子に 愛嬌をふりまく。 夕子、硬張った顔で三佐に愛想笑い。 神妙な顔の裕司。 黙々と食事をする三兄弟。 二佐 「……なんで海に住んでるかわかる?」 裕司 「いえ」 二佐 「税金がかからない」 硬く微笑する裕司。 二佐 「本当は、兄が地震が嫌いでね。伊豆に住んでたから」 一佐、ムッとする。 途端に船がグラリと揺れる。泡を食ってあわてふためく一佐。 A クルーザーのスクリューが激しく回転する | ||
[38]出港してゆくクルーザー | ||
[39]クルーザー・船室 二佐 「今からこの船は神戸へ向かう」 裕司 「神戸?」 一佐 「合田達郎は神戸に潜伏している」 夕子 「本当ですか!生きているんですね」 一佐 「明日までは」 三佐 「(あっさり)明日はサメの餌食だ」 夕子 「−−−!」 裕司 「…………」 | ||
[40]夜の海を疾走するクルーザー | ||
[41]クルーザー・船室 ゴボゴボと音をたててキャビンの後ろのエレベーターが上がってくる。 泳ぎを終えたばかりの女の子(あゆみ)が水着姿で出てくる。 裕司 「……?!」 二佐 「妹のあゆみだ。女優志望。君の目からみてもセンスあると思うだろ」 裕司 「……僕はシンガーですから、よくは」 一佐 「センスあるだろ」 三佐が脅すようにダーツの矢で裕司の頬をペタペタと叩く。 裕司 「……(渋々)ええ、まァ」 二佐 「合田にはただ二千万貸しただけわけじゃない。条件を出した。あゆみをCMでも何でもいいから使えと。 合田は引受けた。ところが合田は、撮影中に、大勢の見守る前で、裸 同然にしたばかりか、役をおろした。かつまた、こう言ったんだ!」 激昂して、ブルブル震える。 あゆみ 「(泣く)……ノータリンレディ」 二佐 「もう一つ!」 あゆみ 「お母さんと買い物でも行きなさい」 二佐 「そう言ったんだ。あのバンスキングは。いいか、この子と我々の母は ……(絶句)」 三佐 「ママンは死んだ」 裕司 「(笑いたいが)……」 シクシク泣きつづけるあゆみ。 あゆみ 「でも、私、タイプなの、ああいう人」 一佐 「あゆみ!」(殴る) キッとなるあゆみ、身を震わせて泣く。 二佐 「あゆみは、……世間を何も知らんあゆみは、あの男に恋してる。邪 悪な恋だ。許せん」 裕司、とうとう吹き出す。 三佐がビュッとダーツを投げる。 一佐が分厚い掌でクルミの殻を割る。 裕司 「…………」 夕子 「…………」 二佐 「不愉快だな。船を下りてもらう」 | ||
[42]同・デッキ 夕子と裕司の乗ったゴムボートを放り出す一佐と三佐。 無表情に見送る二佐。 | ||