ユー・ガッタ・チャンス Story
scenario #9

[48]神戸市・全景
     神戸のシンボル風見鶏が回る。


[49]神戸市民ホール・前
民川裕司セイリングツアー’85 in 神戸
     の巨大看板。
     熱狂的なファン数十人が早くも列を作っている。
     手に手に、地元の夕刊紙。
     『民川裕司、愛に溺れたか!!』
     『依然、連絡つかず 神戸公演 キャンセルか!?』
     坐り込んで泣いている女の子もいる。


[50]静岡の国道
     陽炎。
     練習中の競輪選手がグングン飛ばしてくる。
     一台、二台、三台。
     四台目は普通のボロ自転車。
     裕司が飛ばしてくる。すばらしい脚力。


[51]神戸市民ホール・ステージ
     P・Aのテスト。
     バンドのリハーサル。
     間島、座席でイライラしている。


[52]静岡駅
     自転車ごとつっこんできた裕司、構内へ駆け込む。


[53]神戸市民ホール・ステージ
     チューニングをしているパパのメンバー。
     P・Aのセッティングも終り、ステージの準備が全て整う。


 A 楽屋
     スタッフが集まって協議している。外からは開場を待ちわびたファン達
     の声が聞こえてくる。
スタッフA 「裕司がいない以上開場してもトラブルだけでしょ」
     B 「どうしましょう、間島さん?」
間島 「(決心して)開場しましょう。客入れましょう」


[54]走る新幹線


[55]神戸市内の花時計
     3時半を指している。


[56]神戸市民ホール・客席
     −−−開場。客席が続々と埋まってゆく。


[57]同・楽屋
民 川 裕 司  様
     のプレート。
     中は、花束に埋もれているが、誰もいない。
     間島が死人のような顔で入ってくる。
間島 「(ブツブツ)本日はようこそおいで下さいました。……誠に申し
     わけございませんが、民川裕司が現在の時刻になりましても
     (パッと左右に身をかわす)すみません。物は投げないで下さい。
     (ふり返り)
     これもひとえに私の不徳のいたすところで、覚悟は重々できて
     おります」
     パッとポケットから辞表を取り出して鏡に向ける。
間島 「……裕司。二人で地獄に堕ちようぜ」


 A 走る新幹線
     六甲トンネルにツッ込んでゆく。

 B 楽屋
     パパのメンバーも加わり、重苦しい雰囲気。
  A 「開演時間、どのくらいのばせますかね」
  B 「たとえのばしたとして裕司がこなけりゃ無駄だよ」
間島 「パパのメンバー、スタンバイしてよッ」
     時計の針は4時15分を指している。

 C 新神戸駅
     網を張っている新聞記者達。
     レポーターの林の姿も見える。