ユー・ガッタ・チャンス Story
scenario #10

[58]新神戸駅・ホーム
     時計「4時16分」、下り新幹線が到着する。
     真っ先に裕司が飛び出してくる。



[59]新神戸駅・正面出口
     裕司が駈けてくる。待機していた報道陣が殺到する。
     ライトの放列!


[60]新神戸駅・正面出口
     裕司、カメラマンを払いのけようとして、カメラを叩きこわ
     す。たじろぐ報道陣。
     裕司、駐車した車のボンネットに飛びのり、飛び移り、
     駈ける。
     追う、報道陣。



[61]神戸市街
     裕司、駅前のコンクリートの"河"の浅い水底を蹴って、
     駈ける。滑る。
     その両脇の道を報道陣が追う。


 A 市民ホール
     客席から裕司コールがわき始める。

 B 神戸市街
     異人館通りを駈ける裕司。
     追う報道陣の車。車。
        ×  ×  × 
     裕司、小路に逃げて、車をまく。
     突撃レポーターのバイクが追ってくる。
     裕司、大きな家の広い庭に入りこみ、横断して、別の路
     に駈けこむ。
        ×  ×  ×
     裕司、坂道を駈け下り、駈け登る。
     走って追いかける記者、カメラマン。裕司のスピードに
     ついてゆけず、転んでけがする者。カメラをこわす者が
     続出。
        ×  ×  ×

 C 市民ホール
     次第にエスカレートしてくる裕司コール。

 D 歩道橋
     裕司コールに励まされる様に走ってくる裕司。
     しかし、とうとう橋の上で報道陣にとりかこまれる。
     裕司、歩道橋から身をひるがえし走っているトラックの
     荷台に飛び降りる。
     ア然として見送るだけの報道陣。


[62]神戸市民ホール・通用口
     飛び込んでくる裕司。
     スタッフや関係者が迎えて、報道陣をシャットアウト。
     若い女性スタッフは感激のあまり泣く。
     裕司。通路を急ぎながら、上着とズボンを脱ぎ、ステー
     ジ衣装に着替える。
     間島が渋い顔で待っている。
     ウィンクする裕司。
     間島、通路にステージ用のシューズを置く。
     裕司、シューズに足をつっこむ。
     通路の彼方−−−ステージからオープニング曲のイン
     トロが流れる。
     大歓声。
     裕司、駈ける。
     間島、スタッフも追いかける。
     ステージのソデにくる。
     裕司、飲み物を口にふくみ、霧のように吐き出すと、ス
     テージへ躍り込む。





[63]ホール内
     観客が総立ちで迎える。
     歌う裕司。曲は「ノーノーサーキュレーション」
     裕司、器材に飛びのって、さりげなく客席を見回す。
     壁側の通路に、夕子が立っている。
夕子 「……」
     ステージの裕司と目が合う。
     ステージの裕司、歌いながら舞台を左右に動き回り、客
     席に目をこらす。
     合田がいた。
     夕子と反対側の壁際の席。ノリまくる客と対照的に缶ビ
     ールをのみながら、ムスッとして聴いている。
     裕司、歌いながら苦笑し、夕子のいる方向に向かって
     お辞儀のような格好をする。
     客席の夕子、ハッとして場内を見回す。
     裕司、スタンドからマイクを外し、コードをグルグルまわ
     してピタッと合田の方向にマイクの先を向ける。
     客席の夕子、示された方角を見る。
     客が曲のエンディングを迎えて、さらに興奮し、場内が
     混乱する。
     夕子の視界が悪い。
     夕子、真ン中の通路を横断してゆく。
     総立ちの客。
     探す夕子。裕司、歌いながら見守ってる。
     夕子、ついに合田を見つけた。手を振る。
     二本目のビールを呑む合田は気づかない。
     夕子、熱狂した客を掻き分けて、合田に近づく。
     と、−−−後方のドアから、本郷三兄弟が入ってきた。
     気づいた夕子、驚愕。
     本郷三兄弟は、合田の後ろ姿を見た。
     ソッと歩み寄る三兄弟。
     夕子も合田に歩み寄る。
     オープニング曲、終わる。
     大歓声。
     シーンとなる場内。
     夕子も三兄弟も立停る。
裕司 「(マイク)アイだコイだと騒ぐじゃないよ、エブリバディ」
     シーンとしたまま。突然、合田だけがガハハハと豪快に
     笑う。
裕司 「(マイク)今日の新聞は何だあれ。心配しないでいいからね。いま現在、俺に女はいないから」
     キャーッと拍手する女性客。
裕司 「(マイク。合田の方を向いて)だけどいつ不意打ちをくら
     うかわからないのが、アイだ」
     合田、ハッとして振り返る。
     本郷三兄弟がいる。パッと逃げ出す合田。
     ステージの裕司、見届けて二曲目「グッドラックチャー
     ム」をスタート。
     熱狂する客の合間を縫って、合田と本郷三兄弟の追っかけっこ。
     オロオロと見守る夕子。
     合田が本郷三兄弟につかまりそうになる。
     裕司、ステージから客席に飛び下りて歌い、踊る。
     前列へ殺到する客にまぎれて、合田はうまく本郷三兄
     弟をかわし、出口に向かう。
     見届けて、熱唱する裕司。