ユー・ガッタ・チャンス Story
scenario #11

[64]同・外のロビー
     −−−報道陣が、「抗議集会」をひらいている。
林   「本日起きた民川裕司による我々報道陣に対する妨害
     行為のため、負傷者数名、機材破損という不祥事
     が生じた。我々報道陣はその行為に対し、関係者並び
     に民川本人による謝罪を要求する」
一同 「意義なしッ」



[65]壊れたカメラを見ている裕司
     激しいフラッシュ。シャッターの音。
     隣の間島がしきり顔の汗を拭い、裕司の脇をつつく。
     ?と間島を見、周囲を見回す裕司。
     喧噪が、F・I。
     神戸のホテルでの記者会見場。包帯をした記者もいる。
    「なんだ、その態度は!」
    「責任はどうとるんだ!」
    「こっち向きなさい!」
    「早く発言しなさい!」
    「大阪の記者、馬鹿にしてんのとちゃうか」
    「素直に!素直にならんか!」
    「なまいきもいい加減にしろ!」
     間島がしきりに頭を下げて、裕司に何か囁く。
     裕司、飲み物を飲み干して、おかわりを頼む。
林  「民川君、そろそろ女について話してくれんかね」
間島 「(咄嗟に)申しわけありませんが、その件に関しましては
     、私どもで本人から事実関係をよく聞いたうえで−−−」
裕司 「(間島を制して)皆さんには関係ないでしょ。(見回して)
     でもどうしたんですか、この騒ぎは」
    「話をそらすなよ」
    「わかってない!」
    「どういう神経をしてるんだ」
    「白状しろ!」
    「寝たのか!寝ないのか!」
    「大阪の記者バカにしてんとちゃうか」
林  「何者なんだね、彼女は」
裕司 「……何者なんですかね。よくわからないです。一晩一
     緒にいただけだから」
     どよめき。
     狼狽する間島。
林  「一晩?……ずっと一緒に?」
裕司 「ええ、大体」
間島 「(囁く)少し黙れよ」
林  「何してたの、一晩中」
裕司 「僕は泳いでいました」
     スタッフの一人、間島に耳うちをする。
間島 「(裕司に)余計な事しゃべるなヨ」
     間島、中座する。
林  「え?彼女も?」
裕司 「(挑戦的な表情で部屋を出てゆく間島を見て)いや、彼
     女は、……僕の上にいて、もう死んじゃうとか、無理しな
     いでとか、あなた強いのねとか、ずっと叫んでましたど
     (ニャッと笑う)」
     ア然となる報道陣。
    「はっきり言うね」
    「年上の女みたいだからな」
    「初体験かね」


 A ホテル別室
     電話を受けている間島。
間島 「そんな事したら、裕司の為にならんでしょ。いや……
     はい……会社決定ですか?わかりました。(憮然として
     電話を切る)」



 B もとの記者会見場
林  「彼女は今どこにいるの」
裕司 「さァ、……わからないけど……きっと素敵な夜を過ごし
     ていると思いますよ。じゃ、おやすみなさい」
     裕司、立って出てゆく。
     報道陣が殺到し、取り囲む。
    「おい!こらっ!」
    「なんだ、それは!」
    「待たんか!これからだ!」
    「責任はどうなっとるんや、責任は」
    「大阪の記者を馬鹿にしとんのとちゃうか」
     裕司、無視して出てゆこうとする。
     間島が駆け込んでくる。
間島 「すみません。ちょっとお待ち下さい。静かにして下さい!
     ご報告します!今、会社の方と連絡をとりまして民川裕
     司は謹慎させることにしました!」
     いっせいに、「謹慎!?」の声。
     裕司、思わず間島を見る。
間島 「期間は決めておりませんが、明日からのテレビ、ラジオ、
     ステージ、レコーディング等々のスケジュールはすべて
     自粛させていただきます」
裕司 「……(間島をみらみつける)」